トップページ > スタッフ紹介

総数17件 1 2

特別寄与料を請求するための要件は何か

特別寄与料を請求するための要件は次のとおりです。
1.被相続人に対する無償の行為であること
2.療養看護その他の労務の提供であること
3.被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした場合であること
4.以上の行為をした者が被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者又は欠格事由に該当し、あるいは廃除によってその相続権を失った者を除きます。)であること
5.改正法施行日(令和元年7月1日)以降に開始した相続に関するものであること

相続による権利の承継に関して、どのような改正がなされたのか


相続による権利の承継については、遺産分割、特定財産承継遺言、遺贈等の別を問わず、法定相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を具備しなければ、第三者に対抗することができない旨の規定が新たに設けられました。また、債権を承継した場合における対抗要件具備の方法の特則についても定められました(Q44参照)。

新法の意義
民法899条の2第1項の規定が新設されたことにより、今までは登記がなくとも対抗し得るとされてきた相続分の指定や遺産分割方法の指定による不動産の取得についても、対抗要件を具備することが必要とされます。これは今までの判例法理を変更するものです。実務上多用されている「相続させる旨の遺言」については、改正により「特定財産承継遺言」と定義付けされました(民1014A)が、これについても速やかに対抗要件を具備しなければ、遺言による権利の取得を対抗できなくなる可能性があります。これに対して、法定相続分に応じた権利の取得については、改正後も登記がなくとも第三者に対抗できますので、従前のルールを変更するものではありません。
民法899条の2第1項の規定は、第三者との関係について規定するものであるため、共同相続人間においては登記の有無は問題となりません。例えば被相続人A、相続人がB、Cの二人の子の場合において、AがBに遺産である不動産全部を相続させる旨の特定財産承継遺言を残していた場合、仮にCが法定相続分で相続登記をしたとしても、第三者が現れる前においてはCの登記は無権利の登記であり、Bは登記がなくても不動産全部の権利取得者として、Cに法定相続分による登記の更正を請求することができます。しかし、Cが更正登記手続に応じない間に、もしCの債権者がC持分を差し押さえたような場合には、
Bは民法899条の2第1項により第三者に対抗できない結果、権利の一部を失う結果となります。

アドバイス
遺言による相続登記の依頼を受けた場合には、今まで以上に迅速な対応が求められる場合があります。例えば、受益相続人以外の相続人に債務があり、相続人の債権者が権利行使する可能性がある場合や、遺言によって法定相続分を下回る相続人が強硬な手段に出そうな場合など、相続登記が早い者勝ちになってしまうおそれがあるからです。そのため、相続が発生してからの対応では、遅れをとる可能性もないとはいえません。そこで、そのような可能性がある遺言作成に関与する場合には、遺言作成の段階から相続発生後のリスクに対する説明を十分に行い、遺言執行者に就任しない場合であっても、相続開始後に速やかに動けるような準備をしておくことが望ましいでしょう。

相続分の指定がある場合における債務の承継に関して
どのような改正がなされたのか

相続分の指定等がされた場合であっても、債務の承継に関しては、相続人は、原則として法定相続分に応じて相続債務を承継することを定める規定が新設されました。これは、従来あった判例の考え方を明文化したものです。
そこで、新法では、この判例の考え方を明文化して、民法902条の2本文において、「被相続人が相続開始の時において有した債務の債権者は、前条の規定による相続分の指定がされた場合であっても、各共へ同相続人に対し、第900条及び第901条の規定により算定した相続分に応じてその権利を行使することができる」と規定し、原則として法定相続分に応じて承継されることを明らかにしました。

指定相続分による債務の承継
民法902条の2ただし書は、「ただし、その債権者が共同相続人の1人に対してその指定された相続分に応じた債務の承継を承認したときは、この限りでない」として、相続債権者の承諾があれば指定相続分により債務が承継されることを認めています。


遺留分に関する権利行使の効果を、金銭債権が発生することとしたことにより、実務上考慮をしなければならないポイントはどのようなものがあるのか


遺留分権利者の立場からのポイント

遺留分の主張の方法
遺留分権利者の立場からは、そもそもどういう方法で遺留分侵害額請求権を行使すればよいのかというのが気になるポイントです。これについては旧法下での実務と同じく内容証明郵便等の方法で、遺留分義務者に意思表示を行うことで行使することになります。{民四頒@}。
この意思表示は形成権の行使であり、必ずしもこの意思表示の段階では具体的な金額を明示して行う必要はないと考えられています(一問一答124頁)。

期間制限について
遺留分侵害額請求権の行使については、旧法と同じく短期の期間制限が設けられており、遺留分権利者が相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈を知った時から1年間という消滅時効の期間と、相続開始の時から10年を経過したときという除斥期間が定められています(民1048)。
遺留分侵害額請求の行使により発生した金銭債権の消滅時効は、通常の消滅時効にかかります。すなわち、債権法改正の施行後においては原則として5年間の消滅時効にかかることになります(債権法改正後民166@一)。
 
遺留分義務者が金銭債務の履行を行わない場合
遺留分侵害額請求権を行使しても、遺留分義務者が金銭債務の履行を行わないことも想定されます。特に遺贈や贈与の目的物が不動産等の非金銭財産であった場合には起こりがちでしょう。その場合遺留分権利者としては、最終的には金銭請求訴訟を起こしていくことになります。遺留分義務者が、それでも支払を行わない場合には、遺留分義務者の財産について差押え等を行うことになります。

遺留分義務者の立場からのポイント

遺留分義務者の立場からのポイントとしては、金銭の支払が行えない場合どうすればよいのかということでしょう。手元に現金が無いにもかかわらず、金銭の支払請求を受けるというのは、心理的にも負担が大きいことであります。
裁判所には、金銭債務の支払につき、相当の期限を許与することを求める制度が設けられています(民1047D)。


遺留分制度に関して、どのような改正がなされたのか?


遺留分制度の改正点は大きく分けて二つです。
1.遺留分に関する権利の行使の効果の金銭債権化
2.遺留分に関する計算方法の見直し及び明確化です。

(1)遺留分に関する権利の行使の効果の金銭債権化
 改正前においては、遺留分に関する権利の行使の効果は、物権的効力が生じるとされ、遺留分権利者から遺留分義務者に対する権利の行使により、遺贈等の目的となった財産が遺留分権利者と遺留分義務者の共有となることがありました。改正法では、社会情勢の変化に対応するため、遺留分に関する権利の行使により発生する効果を、遺留分権利者から遺留分義務者に対する金銭債権が発生することとしました(民1046@)。遺留分に関する権利行使の呼称も「遺留分減殺請求」から「遺留分侵害額請求」に改められました。
 事業承継を考える当事者としては、自社株やマンションなどの事業の継続に関わる重要な財産についてはヽ遺留分侵害額請求に対する資金手当てをおこなえば承継がさせやすくなったと言えます。

(2)遺留分に関する計算方法の見直し
遺留分の計算方法の見直しについては、大きなものは被相続人から相続人に対する生前贈与があった場合における見直しです。改正前においては、被相続人から相続人に対して特別受益に当たる生前贈与があった場合には、当該生前贈与がどれだけ昔になされていたものであったとしても、遺留分算定の基礎財産に含めるとされていました(最判平10・3・24民集52・2・433)。これでは、コツコツと事業承継のために生前贈与を行っていきたいという人にとって、意欲を持つ妨げにもなります。そこで改正法では被相続人から相続人に対する特別受益に当たる生前贈与については、原則として相続開始前10年間にされたものに限り遺留分算定の基礎財産に含めることとされました(民1044B求Bこれにより生前贈与が活発化する可能性があります。

預貯金債権又は預貯金以外の金融商品について
特定財産承継遺言がされた場合には、それぞれ遺言執行者にはどのような権限が付与されるか


預貯金債権について特定財産承継遺言がされた場合には、原則として、遺言執行者は預貯金の払戻しや預貯金契約の解約の申入れをする権限を有することが明確にされました。これに対して、預貯金以外の金融商品について特定財産承継遺言がされた場合には、遺言執行者の権限はなお遺言の解釈に委ねられることになります。

1.預貯金債権について
改正後の民法1014条3項により、特定財産承継遺言の対象となる遺産が預貯金債権である場合、遺言執行者は、対抗要件具備行為のほか、預貯金の払戻しを請求でき、また預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の目的である場合には、当該預貯金契約の解約の申入れを行うことができることが明確にされました。ただし、遺言執行者は、払戻しの「請求」や解約の「申入れ」をする権限を有するにとどまり、強制的な解約権限を有するものとはされていません。したがって、例えば定期預貯金であって履行期が到来していないときには、金融機関は、当該請求又は申入れに応じるかについてなお裁量を有しているものと考えられます。

2.預貯金以外の金融商品について
これに対して、特定財産承継遺言の対象となる遺産が預貯金以外の金融商品である場合の遺言執行者の権限については、様々な性質の金融商品があり、一律に規定を設けることが相当でないことから、改正法に規定は設けられませんでした。このことは、反対解釈として預貯金以外の金融商品について遺言執行者の解約払戻し等の権限を否定するものではなく、遺言執行者の権限の有無は、なお遺言の解釈に委ねられることになります。

アドバイス
民法1014条3項の規定は、預貯金債権を目的とする特定財産承継遺言がされた場合における遺言執行者の権限を定めた規定であり、預貯金債権の遺贈がされた場合については適用がありません。また、既述のとおり、預貯金以外の金融商品についての遺言執行者の解約払戻し等の権限の有無については、なお遺言の解釈によることになります。したがって、これらの場合には、遺言者がその遺言において、遺言執行者に預貯金等の払戻し権限等を付与する旨を明記しておくことが望ましいものと考えられますので、遺言書を作成する際には留意する必要があるでしょう。

不動産について特定財産承継遺言がなされた場合、
遺言執行者は、受益相続人のために相続登己を単独で申請することが可能か


特定財産承継遺言がなされた場合には、遺言執行者に、対抗要件の具備に必要な行為をする権限が付与されました。ただし、事前に受益相続人の了解を得た上で行われるべきであると考えられます。

1.特定財産承継遺言がなされた場合の遺言執行者の権限
従前の判例が承認してきたいわゆる「相続させる」旨の遺言については、新法において、これを「特定財産承継遺言」として定義付けられました。その上で、特定財産承継遺言がなされた場合には、遺言執行者は、対抗要件の具備に必要な行為をする権限を有するものとして明記されました(民1014A)。これは、今般の改正により、遺産分割方法の指定による権利変動についても、受益相続人の法定相続分を超える部分については対抗問題として処理するものとされたこと(民899の2@)、近時、相続時に相続財産に属する不動産について登記がされないために、その所有者が不明確になっている不動産が多数存在することが社会問題となっていること等に鑑みて、遺言執行者において速やかに対抗要件の具備をさせる必要性が高まったためであると説明されています(中間試案補足説明50頁・51頁)。

2.不動産を目的とする特定財産承継遺言がなされた場合
不動産を目的とする特定財産承継遺言がなされた場合には、遺言執行者は、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときを除き、単独で、相続による権利の移転の登記の申請をすることができます(民1014A)。これは先に述べたとおり、遺言執行者において、速やかに対抗要件を実現させる必要性が高まったことから、遺言執行者の権限として明確化されたものです。
遺言執行者は、受益相続人の法定代理人として登記の申請をすることになるため(令元・6・27民二68)、相続登記が完了した際には、遺言執行者に対して、登記識別情報が通知されることになります(不登規62@)。
なお、受益相続人が対抗要件を備えることは、遺言の執行の妨害行為(民1013@)には該当しないものとされており、受益相続人が自ら単独で相続による権利の移転の登記を申請することができることに変わりはありません(一問一答117頁)。

遺言執行者の復任権に関して、どのような改正がなされたのか


遺言執行者は、自己の責任で、第三者にその任務を行わせることができるとされました。
なお、やむを得ない事由により第三者にその任務を行わせる場合には、遺言執行者はその選任及び監督についての責任のみを負います。

1.改正前の規律
 改正前の民法1016条は、遺言執行者の復任権を原則的に否定し、例外的に、やむを得ない事由がある場合や遺言によってあらかじめ許されている場合にのみ、復任権が認められていました。そして、第三者にその任務を行わせる場合には、その選任及び監督について、遺言執行者は相続人に対して責任を負うものと定められていました。
 これは、遺言執行者は他の法定代理人とは異なり、遺言者との信頼関係に基づいて選任される場合が多く、任意代理人に近い関係があることを考慮したものです。

2.復任権の必要性
 しかし、遺言執行者の職務は、遺言の内容いかんによっては非常に広範に及ぶこともあります。それにもかかわらず、遺言執行者には必ずしも法の専門家でない遺言者の親族等が指定されることも多く、事案によっては、司法書士等の専門家にこれを一任した方が適切な遺言の執行を期待することができる場合もあります。また、遺言者が遺言執行者を指定しない場合には、遺言執行者は任意代理人よりも法定代理人に近い立場にあるものといえます

3.改正後の規律
 改正法では、こうした点を考慮して、遺言執行者についても、他の法定代理人と同様の要件での復任権が認められました。具体的には、遺言執行者は、原則として自己の責任で第三者にその任務を行わせることができるものとしつつ、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従うものとされました(民1016@)。
 復任権を行使した場合の責任についても、第三者に任務を負わせることについてやむを得ない事由があるときは、他の法定代理人の場合と同様に、遺言執行者は、相続人に対してその選任及び監督についての責任のみを負うものとして(民1016A)、その責任の範囲を明確にしています。なお、遺言者が別段の意思を表示した場合の責任については、特別の定めが設けられておらず、解釈により定められます。

<参考:復任権の有無と遺言執行者の責任>
復任権の有無と遺言執行者の責任

第4章 遺言制度に関する見直し

アドバイス
遺言執行者には遺言者の親族が指定されることも多く、その者が高齢であったり多忙であったりしたときに、遺言執行者の執務全般を専門家に依頼したいという要望は、これまでも少なからず存在しました。こうした相談が持ち込まれた際に、あらかじめ遺言で遺言執行者が第三者にその任務を行わせることが許可されていなければ、相談を受けた司法書士は相続登記など個別の手続について受任することができるのみで、遺言執行者の執務全般を受任することはできませんでした。
改正法の下では、司法書士などの専門家が、遺言執行者から包括的に委任を受けて、遺言執行者としての職務に当たることが原則として可能となりました。これにより、遺言執行者に指定された者の負担軽減や、円滑な遺言内容の実現につながるものと考えられます。ただし、遺言執行者が第三者にその任務を行わせた場合であっても、相続人に対してなお一定の責任を負うことに留意しなければなりません。

遺言執行者に就職した際に課される通知義務は、
どのようなものか


遺言執行者は、その任務を開始したとき、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければなりません。

1.遺言執行者の通知義務
旧法には、遺言執行者が就職した事実や遺言の内容を相続人に通知すべき旨の明文の規定は存在せず、遺言執行者から通知がないことに関して、相続人(特に非受益相続人)との間でトラブルになるケースもありました。
もっとも、遺言内容の実現は、遺言執行者がない場合には相続人が、遺言執行者がある場合には遺言執行者がすべきことになりますので、遺言内容及び遺言執行者の有無について、相続人は重大な利害関係を有しています。
そこで、遺言執行者がその任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならないものとされました(民1007A)。
本規定に基づく遺言執行者による通知は、その有無が遺言執行の効力とは無関係であるものと考えられますが、遺言執行者が遺言内容の通知を怠れば、善管注意義務違反を問われるおそれがあります。

2.通知の対象
本規定は、遺言執行者がない場合には遺贈等の履行義務を負う立場にある相続人を保護することを目的として、新たに設けられました。したがって、遺留分の有無に関わらず、全ての相続人に対して通知すべき義務を負うことになります。
一方で、受遺者は履行義務を負う立場にはないことから、本規定による通知の対象とはされていません(部会資料17 ・ 22頁〜23頁)。しかし、改正後の民法1012条2項の規定により、遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができるものと定められました。これにより、遺言執行者の就職の有無について、遺贈の履行を求める立場にある受遺者もまた、重要な利害関係を有するものといえます。他方で、遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちに遺贈の履行に着手しなければなりません(民1007@)。したがって、法律上の義務でこそありませんが、遺言執行者が就職を承諾した際には、受遺者に対しても、遅滞なく通知をすべきであるものと考えられます。

3.通知の内容
通知の内容については「遺言の内容」と定められているのみであり、その方法については特段の定めがありません。例えば、遺言書の写しを添付して通知する方法によることなどが想定されます。
なお、遺言執行者に就職したこと自体については、条文上、通知すべき内容として明記されていません。これは、遺言執行者が就職を承諾した場合には、直ちにその任務を開始することになる(民1007@)とともに、通知義務も任務の一環であり、就職を承諾していることは当然の前提となるためです(部会資料24-2 ・ 27頁)。

4.経過措置
 本規律は、施行日前に開始した相続に関して、施行日以後に遺言執行者となる者にも、適用されます(改正法附則8@)。

相続による権利の承継に関して、遺言執行者はどのような点に注意すべきか


改正により、法定相続分を超える部分については、「登記、登録、その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない」とされたこと、特定財産承継遺言については遺言執行者に対抗要件を備えるために必要な行為をする権限が付与されたことから、速やかに登記申請その他の対抗要件を具備するための行為をする必要があります。

1.遺言執行者の権限の改正

(1)登記申請権限
相続法の改正により、特定財産承継遺言により選任された遺言執行者は、「対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる」と定められました(民1014A)改正前においても、遺贈については遺言執行者が登記義務者として所有権移転登記の申請を行ってきましたが、いわゆる相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)については、受益相続人による単独申請が可能であり、遺言執行者は遺言の執行として登記手続をする義務を負うものではないとされていました(最判平7・1・24判時1523・81)。しかし、今般の改正により、特定財産承継遺言がなされた場合に対抗要件を具備する行為についても、遺言執行者の職務権限であるとされました。また、遺贈についても、遺言執行者が選任されている場合は、遺言執行者のみが遺贈の履行をすることができることも明記されました(民1012A)。以上の改正により、遺言に基づく登記申請における遺言執行者の役割は、従来以上にその重要性を増しているといえるでしょう。

(2)通知義務
遺言執行者の権限に関するもう一つの重要な改正は、遺言内容の通知義務が課されたことです(民1007A)。遺言執行者は、「その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない」とされ、遺言執行者が遺言内容の通知を怠れば、善管注意義務違反を問われるおそれがあります。遺言の内容については、従来も、実務上は財産目録の交付と同時に遺言書の写しを送付するなどして通知することが一般的でしたが、遺留分のない相続人に対しては紛争防止の観点から具体的な内容までは開示しない場合もあったのではないかと思われます。しかし、今後は、推定相続人の遺留分の有無を問わず、確実に通知義務を果たす必要があります。

(3)通知のタイミング
(2)の通知義務との関係で問題になるのが、(1)の遺言執行者による登記申請と(2)の通知義務の履行のタイミングの問題です。(2)の通知義務は、任務の開始後、遅滞なく履行する必要がありますが、特定財産承継遺言の遺言執行者が、もし通知義務を先に履行し、登記申請手続を留保している間に、受益相続人以外の相続人が法定相続分で登記を入れ、持分を第三者に譲渡して第三者が登記を備えてしまうと、遺言の内容を実現できなくなります。このような場合には、遺言執行者の任務懈怠として捉えられかねません。よって、遺言執行者としては、このような事態が生じないように細心の注意を払う必要があります。具体的には、相続が発生したら直ちに登記申請ができるように、事前の準備を十分にしておき、登記を申請するのと同時に、あるいは登記を先に申請してから受益相続人以外の相続人に遺言の内容を遅滞なく通知するなどの工夫も必要になるでしょう。なお、預貯金債権については、金融機関に遺言執行者の就任通知と合わせて債権の承継通知を送付することにより対抗要件を具備することになります。

総数17件 1 2

お電話でのお問い合わせは TEL:072-956-3311 メールアドレス info@office-makino.com

メールフォームからのお問い合わせはこちら